前歯が欠けてしまったので何とかしてほしいというご相談で来院されました。
欠けたというよりもすり減って刃こぼれしてしまったような状態。
特に左側(写真右側)の1番目と2番目はかなり短くなってしまっています。
見た目に最も影響のある前歯4本の長さが左右対称で歯なくなってしまっています。
食いしばり・歯ぎしりがものすごく強いことがこの写真だけでもわかります。
下顎前歯の下の歯肉に骨隆起が認められ貧血し白く光っているのがわかりますよね。
奥歯がすり減って低くなっているので下顎前歯が突き上げて刃こぼれを起こしたのです。
患者様のご希望はラミネートべニア修復でできるだけ天然歯質を削りたくないとのこと。
もちろんラミネートべニアは良いのですがこのまま原因を解決せず行ってもダメ。
対処療法ではなくある程度根本的な原因を解決しなければまた同様のトラブルが起きます。
ちなみに患者様は30代前半の女性。
奥歯はこのようにエナメル質がほとんどなく象牙質まで露出している状態。
何度か虫歯治療を行った痕跡はありますが軟らかい光重合型コンポジットレジン。
強い咬合力に耐えられるはずもなく外れたり2次う蝕を作っています。
臼歯部の咬合を安定させ前歯の突き上げを緩和させなくては前歯の治療は難しいとお伝えし、
下顎左右の大臼歯4本も一緒に治療させていただくことになりました。
下顎左右大臼歯4本をフルジルコニアで咬合面をカバーしかみ合わせをほんの少し挙上。
神経に影響がないように天然歯の削合量を最小限にした歯肉縁上スリークォータークラウン。
今は透明感のあるジルコニアもたくさんありますがあえて強度の高い1世代前のタイプを選択。
手前の小臼歯よりもやや明るいですがとにかく強度と長期安定性が重要なのでこれで納得していただきました。
小臼歯部の小さな虫歯を治しながらここもややかみ合わせを挙上し、
前歯にかかるストレスを軽減し可能な限り余裕を作っていきます。
前歯4本にラミネートべニアを装着。
本当は左上犬歯(写真右側)の1本も行って完全に左右対称に仕上げたいところでしたが、
ひとまず最小限の本数でやりましょうということで4本のみになりました。
昔と違い現在はオールセラミックの強度が上がりましたし接着材料が向上したので、
今こそ審美治療を行う際にラミネートべニア修復の出番が多いように思えます。
ただし接着力頼りな部分もあるので症例をきちんと選別しなければなりません。
支台の天然歯の色が透けやすいのでセラミックや接着剤の色の選択も重要です。
今回のように歯ぎしりがひどく切端にストレスがかかることが予想される場合には、
セラミックを巻き込んで強度を維持するデザインにし強度を確保しなければなりません。
コンタクトレンズのように極薄のセラミックプレートを唇側のみに張り付けるべニア修復もありますが、
今回はあえて昔ながらの切端巻き込み型のラミネートべニア修復で行いました。
しかし天然歯を削合する際も麻酔なしでできる範囲ですし最終装着まで仮歯も付けません。
トラブルの原因は遠いところにあることが多いのでどんな時でも広い視野で診断することが大切ですね。
・治療担当 KU歯科クリニック 梅田
・技工担当 スタジオ246 石川
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25年目を迎えた名(迷)コンビで担当させていただきました。笑