健全な天然歯でも長年使っていけば咬む面がすり減っていきます。
天然歯には歯根膜があるので咬んだ時少し沈んでくれますが、
人工物であるインプラントは歯槽骨と直接結合するのでほぼ沈みません。
そのためインプラントの上部構造の歯は強い負担がかかりすり減りがとても早い。
すり減りすぎて薄くなってしまえば破損したり脱離したりするトラブルが起きます。
そのためどんな材料が適切なのか長年議論され、担当歯科医によって考えは様々です。
こちらのケースは海外でインプラント治療を行った患者様のトラブル。
東南アジアのある国で10年以上前に行ったのだそうです。
最も大切なインプラントと骨の結合には大きな問題ありませんが、
上部構造の前歯4本がはがれるように取れてしまい緊急的に接着材でつけてると。
上部構造は6本のインプラントに対して12本の人工歯の連結タイプ。(写真上)
人工歯肉や歯冠部分もともに軟らかめの硬質レジン(合成樹脂)でできていました。
中のフレームもかなりシンプルで1本の細い棒のような補強のみでできており、
それに総義歯のように人工歯を並べているような簡単なつくりのものでした。
つまり人工歯1本1本を個別補強するサポート部分は残念ながら全くなく、
歯肉部分の硬質レジンの中に硬質レジンの人工歯が入ってるだけ。
総義歯ならまだ良いが咬む力の負担の大きなインプラントにはちょっと…。
ちなみに当医院ではこの材質はチェックのための仮歯として使用します。
上の写真でもわかるように、あったはずの奥歯の凸凹はすり減りまっ平な状態。
下顎のインプラントにも同様の材料の上部構造が装着され同じようにすり減ってます。
つまり上下の奥歯の咬む面がすり減りすぎて全体のかみ合わせの高さが低くなり、
下の前歯の先端が上の前歯を突き上げて補強のない人工歯が外れてしまったのです。
インプラントの上部構造は天然歯にはある歯根膜という緩衝材がないため、
天然歯では許容範囲のわずかなエラーが大きな問題になってしまうことがある。
なのでインプラント独特の特性をきちんと理解して上部構造を設計したり、
微妙で繊細なかみ合わせ調整を行うことが大切なのです。
そして重要なのは、
もしトラブルが起こったとしてもシンプルな方法で修理可能な設計
に予めしておくこと。
こちらの患者様にもご理解いただき上部構造を新たに製作することになりました。
この古い上部構造は完成までの仮歯として利用していく予定です。
KU歯科クリニックグループは、 他の歯科医院で行ったインプラント治療のサポートを
積極的に行います。 お気軽にご相談くださいね。