右下6番の歯根破折で感染が広がり周囲の歯槽骨を広範囲に溶かしている状態です。(写真上)
遠心根が完全に縦割れしており手前の5番を支える支持骨まで悪影響が広がってそうです。
奥の7番が欠損の状態で長期間放置されているのでこの6番に負担が集中したのでしょう。
食いしばりが強い方とはいえ咬合バランスが崩れるとこんなトラブルを招いてしまいます。
患者様は有名な眼科医の先生でご家族の方からインプラント治療をしてほしいとのご依頼。
大変お忙しい方なので抜歯は近隣の先生にお願いし連携して治療を進めていくことになりました。
4月8日に抜歯と感染物の除去を行ったと担当医の先生からご報告をいただきました。
ご協力感謝いたします。
静脈内鎮静法で無事2本のインプラントを埋入と骨造成を行いました。(写真上)
抜歯から22日しか経過してませんのでまだ歯肉も塞がっておらず幼弱な上皮が覆っているだけの状態。
その上皮や歯肉にダメージを与えないよう慎重に切開剥離を行い更に減張切開を行います。
そしてコラーゲンプラグと感染物を再度完全に掻把した後にディコルチケーションを。
慢性炎症が長期間あると周囲の歯槽骨表面は硬く変性してしまいますので、
何もしないでただ骨造成を行っても移植はうまくいきません。
このような場合は1度骨表面を掻把して周囲の健全な歯槽骨から骨髄液を出血させます。
点状の小さな穴をたくさん開けて欠損部分にその骨髄液が流れ込んでくるよう準備します。
ダメージの大きかった6番は中隔を利用して初期固定をしっかり確保。
意図的に深く埋入しすぎないよう注意し、高さ4ミリの延長ヒーリングアバットメントを装着。
骨量が十分な7番のインプラントを埋入する際に採れてきた自家骨を集めておき、
舌側側の骨隆起を除去して採取できた自家骨と併せてそこに人工材料を混和させます。
それをダメージの大きかった6番の骨欠損部に填入し吸収性の人工膜で被覆し縫合。
長期間外圧に耐えられるようにあえて高さのあるヒーリングアバットメントにしました。
インプラントが安定するまでの期間にテントの支柱のような役割をしてもらうためです。
埋入手術後に撮影したそれぞれのインプラントのCTの3次元画像。(写真上)
奥の47番も骨造成した手前の46番も同じ直径5.0ミリX11ミリのインプラントを選択。
硬い骨質のためあえてストレートに近くあまり固定ストレスがないタイプにしました。
また広範囲な骨造成を行ったケースですし患者様は高齢者で喫煙者であることから、
将来の骨吸収に備えあえて1.4ミリのマシンサーフェス(機械研磨面)が付与されてるもの。
その2本のインプラントをを痩せにくい舌側の皮質骨に先端を食い込ませて安定させています。
大量な骨造成を行いましたが骨隆起を削除したので歯肉に余裕ができ減張も最小限で完全閉鎖。
広範囲のダメージがある大臼歯で抜歯後22日というあまり行わないタイミングでしたが、
患者様のご近所の先生のご協力もあり無事予定通りのインプラント埋入を行えました。
大臼歯の抜歯同時や1か月以内のインプラント埋入は被覆する歯肉が不十分になりやすいです。
手術回数をできるだけ少なく治療期間を短縮させる低侵襲インプラント治療を追求するために、
昔と違い現在では劣悪な環境でも固定できる様々なインプラントがたくさんあります。
しかし初期固定を求めるがあまり太すぎるインプラントを入れて周囲組織にダメージを与えてしまったり、
変性した骨表面の改善や幼弱な軟組織の取り扱いが正しくできなければうまくいきません。
特に大臼歯の場合は抜歯してできた穴とインプラントサイズの差が大きいので歯肉不足に陥りやすいです。
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