前歯2本がほんのり赤紫色だった。
もしかして神経治療の途中ですか?
思わず訊ねてしまった。
かかりつけの先生には一応終わってると。
えぇ…。
ある方のご紹介でお会いした30代女性。
笑った時の上唇の捲れも大きく前歯が良く見える。
それだけにこの変色歯2本はちょっと。
それよりもこの歯の将来が心配。
来院していただいてレントゲンを撮影する。
2本共にかなり大きな根尖病巣があった。(写真左赤ライン)
ちなみに痛みや腫れは全くなし。
歯内療法にもいろいろな状況がある。
生きてる神経を除去する場合。
虫歯を除去していくうちに歯髄まで到達し、
神経を取らなければならなくなる。
これは治療後の予後も比較的良い。
次に神経はあるが死んでしまっている場合。
何らかの理由でいつのまにか神経が死んでしまい、
根尖に膿を作ってしまっている。
これは治療後の予後も微妙。
最後はすでに神経治療が終わっており、
封鎖用薬剤が入っているにもかかわらず、
根尖に膿を作っている状態。
これも同じく治療後の予後は良くない。
こちらの患者様の場合は2番目。
なので腐敗した神経を除去し消毒洗浄を繰り返す。
そして最終的には遮断するための薬剤を填入。
神経を取ると乾燥し劣化するので補強が必要。
ファイバーの支柱をレジンで一体化させ、
オールセラミッククラウンを装着した。
かれこれ10年以上経過しレントゲンを撮影。
根尖の病巣は奇麗になくなっており、
新しく歯槽骨が再生されている。
これを感染根管処置と言います。
最先端の高度な技術の取得も大切ですが、
このケースの様な基本的な治療が大切です。
日本の歯内療法治療費はアメリカの20分の1。
だからかもしれないが再発感染根管処置率が高い。
歯内療法がうまくいっていたとしても、
咬合負担に耐えることができなくなることがある。
神経を取ると乾燥し劣化してくるので、
ヒビが入ったり割れたりすることがある。
なので補強用の支台築造もとても大切だ。
歯科でも専門医制度が確立されてきた。
近隣の歯内療法の専門医とも提携し、
難しいケースはご紹介したりしている。
私は日本口腔インプラント学会専門医であるが、
歯内療法も修復補綴処置も外科処置も行います。
総合歯科診療のKU歯科クリニックです。
これから先何年この状態で持ってくれるか楽しみだ。