なんでも初めてのことは不安である。
お化け屋敷だって2度目になれば怖くない。
乳歯から永久歯に生え変わるので抜歯は大半の人が経験する。
でも人工物を体内に入れるインプラント手術は誰もが行うわけではない。
日本国内においてインプラント経験者は1割以下。
これは欧米に比較してかなり少ない。
「経験者が少ない=知らないものの恐怖」となるわけです。
そんな不安なインプラント埋入手術ってどんな感じなのかをお話しします。
上のレントゲン写真は初めてのインプラント埋入手術を行ったケース。
過去複数の歯科医院でインプラント治療を勧められたが決心がつかなかった。
今回前歯が大きく欠けたことでうちの患者様のご紹介で覚悟して来院。
奥歯を作らなければ欠けた前歯を治してもまたすぐダメになることを説明。
全体の咬合バランスが重要なので常に広い視野で診断しなければならないのです。
ご理解していただきついにインプラント治療を行うことにななりました。
ちなみに欠損部を補う方法はインプラントだけではない。
しかしこちらの患者様は健全歯を削るブリッジや、
取り外し式で違和感大の入れ歯は希望されなかった。
今回は下顎臼歯部という比較的骨質も硬めで骨量も十分ある。
イージーケースということで左右2本同時に手術を行った。
右下には残根(C4保存不可)があり左下は抜歯して5年以上経過。
まず左右共に虫歯治療と同じ表面麻酔と局所麻酔を行う。
10分もすれば麻酔は効いてくるのでまず右下の残根を丁寧に抜歯。
歯根の先端しか残ってないのですぐに揺れて1分もかからず終了。
その後残根部分の感染物を徹底的に取り除き抜歯窩を一層掻把。
インプラントサイズは直径4.3ミリ長さ11ミリを選択。
抜歯窩が残っている場合は太いインプラントのほうが固定は簡単だが、
既存骨のサイズに対して太すぎるインプラントは絶対に入れてはいけない。
インプラントを支える支持骨は全周で1.5ミリ以上できれば2.0ミリ必要。
もちろん天然歯の歯根にも近づけすぎてはいけない。
今回は硬い骨なのでインプラントを過度に窮屈に入れ過ぎてはいけない。
骨を削合する際の温度上昇も注意が必要だが歯槽骨への過剰な圧迫も禁物。
なので基本ドリリングに追加で硬い皮質骨用ドリルとねじ切りまで行って、
インプラントが過度に窮屈にならないよう十分な注意を図る。
左のように抜歯して5年以上経過し骨再生があれば更に注意が必要。
インプラントを埋入する器材は回転スピードと埋入トルク値を設定できるので、
その数値をしっかり確認しながら過剰なストレスがかからないよう埋入する。
今回のケースは2本共に埋入トルク50Nが軽く出ていたので1回法で行った。
1回法とは歯肉を貫通させる厚みのあるキャップをインプラント埋入時に同時固定し、
骨結合(オステオインテグレーション)を待ってから行う2次手術を行わない方法。
インプラント埋入窩形成+インプラント埋入+延長キャップ装着
この3つのステップを1本行うのに約3分ほど。
その前に行った歯肉の切開剥離は片側約1~2分。
つまり麻酔が効いた状態で「さぁ、これから始めますよ」と声をかけて、
インプラント埋入が終わり縫合直前まで1本約5分程度なのだ。
延長キャップを固定したら前後に1針づつ縫合。
なので今回は左右合計で4針縫合。
縫合法は上皮と骨膜をしっかり合わせる垂直マットレス変法。
縫合糸は美容整形の先生も多用するプラークの付着しにくい溶ける糸。
縫合4針で約5分。
ということは「はじめますよ」から終わりましたまで、
左右2本のインプラント埋入手術と残根抜歯の総治療時間は約20分。
もちろん昔と違ってCTで診断も正確にできるようになったし、
ガイデッドサージェリーで行えば位置のミスもまずない。
そういうことも短時間で行うことができる要因である。
では手術時間が短ければいいのかというとそうではない。
ステップ毎に慎重に確認しなければならないこともたくさんある。
しかし歯槽骨は本来外界に露出させてはいけないので、
露出時間は最短にしなければならないしいたずらに長いと悪影響もある。
なので、器具器材材料の準備不足や知識不足による判断の遅さはNGだ。
初めてのインプラント治療で不安に思われていた患者様ですが、
終了後思い切ってやってよかったと嬉しい言葉をいただけました。
・注意
すべてのインプラントケースがこのように簡単に行えるわけではありません。
担当歯科医師によって若干考え方も違うし経験や知識にも差があります。
同じ結果が出るとは限りませんので誤解のないようにお願いします。
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通算18000本以上の経験のある日本口腔インプラント学会専門医が担当
医)京和会 KU歯科クリニック 渋谷・銀座・青山・新宿・品川・世田谷・成城
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