すり減ってしまった前歯を綺麗にしたいというご相談。
患者様はなんと20代女性です。
おそらく左の前歯は元の長さの半分くらいになってます。
左右2番目の歯の先端もギザギザになっておりかける寸前。
使い続けた包丁の刃こぼれと言ったところでしょうか。
下の前歯の付け根の歯肉が白く貧血し張り出しています。
これは食いしばりや歯ぎしりがあることで起こる骨隆起です。
生まれつきあるものではなく長期に及ぶ機械的刺激により徐々にできたもの。
顎は耳の前にある顎関節を中心にやや前方に移動しながら蝶番のような動きをしています。
なので前歯が極端にすり減ったり隙間ができて突き上げていることが予想されている場合、
奥歯のかみ合わせがどのような状態になっているかを確認しなければなりません。
やはり左右の大臼歯の咬合面がかなりすり減っていました。
当初あった咬頭と言う尖った部分がほぼなくなってほぼ平らにすり減っています。
やや黄色く見えてしまっているのは表面のエナメル質がすり減ったせいでなくなってしまい、
深部の象牙質が露出してしまっているのです…。
しかしこのように少しづつすり減っていた場合はあまりしみることがありません。
内部の歯髄が形を変えて避けたりするので意外と痛みは感じないことが多いのです。
上顎よりも下顎の大臼歯の咬耗(すり減り)はひどく充填物は一部剥がれて虫歯になっていました。
光重合型コンポジットレジンを使ってあちこち何か所にも重点されてますが、
これだけかみ合わせが強い方の奥歯の詰め物の材料としては不十分です。
軟らかすぎて詰めてもまたすり減り薄くなった部分からまたかけてを繰り返します。
ここまですり減り不適合な充填物がある場合は全体解決が必要になります。
虫歯を除去したあとに強いかみ合わせに耐えられすり減りや食いしばりに強い材料を選択し、
可能であればかなり低くなった奥歯のかみ合わせを少しでも回復できたほうが良いです。
そうすると斜めに削れて見た目が悪くなった前歯の審美治療も長期的に維持できますから。
逆に言うとその解決なしに前歯をきれいにしたところでそれはあくまで一時的なもの。
ダイレクトボンディング、ラミネートべニア、オールセラミッククラウン…どんな治療をしたとしても、
全体のかみ合わせのバランスが整っていなければまた短期間で壊れてしまいます…。
今回の治療では、
①左右の下顎大臼歯2本づつ4本をジルコニアクラウンに
②上顎前歯4本をラミネートべニア修復
③歯ぎしり防止のためのマウスピース作成
を行うことになりました。
長期維持を考えるなら奥歯のクラウンはジルコニアではなく金の含有量の高いクラウンのほうが良いですが、
下顎大臼歯部は奥歯ですが審美的に影響のある部分ですのでジルコニアで行うことになりました。
もちろん神経をそのまま残しますのでたくさん歯を削れませんから厚みが確保できません。
なのでジルコニアの中でも強度が最も高い透明感の少ないタイプにさせていただくことも了承。
そのうえで前歯をラミネートべニア修復させていただこうと思っております。
欲を言えば下の前歯のデコボコも部分矯正したいくらいです。
次回お話ししてみようかなぁ。
1本の歯の小さな詰め物のやり直しでその部分を詰め治せば終わり…と思ってしまう方も多いですが、
そもそもその部分に物が挟まりやすく清掃しにくく虫歯になる原因は歯並びやかみ合わせであることがあります。
最近は拡大鏡やマイクロスコープで拡大して精密で確実な歯科治療することがスタンダードですが、
同時に広い視野で口腔内全体をチェックしたり患者様と普通に会話して癖や表情などを見ることが大切です。
歯ぎしり・食いしばり・ブラキシズム・咬耗の歯科治療
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実際の臨床例の1つです。
参考にされてください。
KU歯科クリニック