持続的に痛みがあるわけではないが時々違和感がある。
そんな症状を訴えて来院された患者様。
基本検査にて数枚のレントゲンを撮影し患部を診ると、
7番の近心(左の歯の手前の歯側)にわずかに透過像があり、
過去に行った7番の歯内療法が不十分な状況。
当初は6番目か7番目かよくわからないとのことだったが、
咬合痛も打診痛もこちらの7番で間違いなかった。
そこで古い補綴物を外して内部を確認することに。
まずは外側のセラミッククラウンを外し、続いて内部のメタルコアを慎重に外します。
神経治療を行って長時間が経過した歯は乾燥してもろくなってしまっているので、
コア除去の際に無理な力を加えると亀裂が入ることもある。
今回のコアは範囲が広いものの深さはなかったのでスムーズに除去できましたが、
コアの除去は細心の注意が必要になります。
CT撮影は画像を鮮明にするために金属除去後に。
やはり7番のMB(近心頬側根)を中心に歯槽骨吸収が起きていて、
それが起因しているのか上顎洞粘膜も肥厚していた。
既に6番の遠心から7番にかけての頬側の皮質骨はほぼなく、
根尖の透過像との連続性がこの3次元データから確認できます。
ちなみにこの7番は3根だがDB(遠心頬側根)のみ充填材料が入っており、
あとのP(口蓋根)と問題の根源と推測されるMBもなにも入っていなかった。
マイクロスコープで12.5倍に拡大して汚れや古い接着剤を慎重に除去。
まだ回転切削器具は一切使っておらず超音波の振動での洗浄のみ。
メタルコアの更に深層にはアマルガムも一部あったので、
この歯は数回に渡って歯内療法や補綴処置を繰り返しているのだろう。
回転切削器具のあてた後もたくさん見える。
問題のMBからは膿汁があふれ出ていたので洗浄を繰り返した。
Pはカラカラに乾燥しているようだった。
DBは根管充填材料が入っていました。
黄色い線で囲まれた部分は感染歯質が大量にある部分で、
器具で触るとまるでぬかるみの様に軟らかく剥がれていく…。
歯内療法をうまくできたとしてもこの部分の歯質があまりにも薄くなれば、
大臼歯の咬合力に耐えることはできず歯根破折を起こすだろう。
いや、もしかしたら感染歯質除去の最中に貫通してしまうかもしれない。
ひとまず状況確認は終わり、排膿させて内圧を下げる応急処置は終了。
患者様から、治療終了後すぐに違和感が軽減したと言われホッとした。
しかしこの歯を残せるかどうかはこれからが勝負なのである。
次回麻酔下でこの黄色い感染部分を慎重に除去していく予定です。
この歯を保存できる条件としては、
・歯内療法をきちんとやりなおすことができる
・感染歯質を除去して咬合力に耐えられる土台作りができる
となります。
どちらかが欠けても歯の機能は回復しません。
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