マイクロスコープを活用することで非常に精密な歯科治療を行えるようになりました。
拡大することで、はっきりしなかったトラブルの原因がわかり解決することが可能です。
その結果、安易に大切な健全歯を削らずに済み神経へのダメージも少なくなります。
保存は厳しいと思っていた歯を抜かずに残すこともできるようになりました。
こちらは奥の大臼歯が2本ともなかったため、まずインプラント治療を先に行いました。
手前の2本の治療に取り掛かると不安定な仮歯になるので、インプラントに咬合負担をしてもらうことにしました。
そのインプラントを支えるための骨量が不足していたので、骨造成を行い支持骨を増やしてから上部構造を装着します。
手前2本の小臼歯は古いかぶせ物が入っていました。
しかし共に不適合で中がかなりの虫歯になっているようです。
更に写真右側の5番の根尖には歯根嚢胞ができています。(矢印の黒い部分)
マイクロスコープで拡大して、古いかぶせ物を慎重に外していきます。
感染歯質だらけなので大まかに汚れを取り、慎重に古いセメントを除去していきます。
超音波振動をあてると2本のポストがグラグラと揺れ始めました。
器具でスクリューをつかんで逆方向に回転させ引っ張り出します。
2本のスクリューを除去して更に汚れを除去してレントゲンで確認します。
近心部分がかなり深いところまで感染しているのがわかります。(矢印の黒い部分)
再歯内療法は割とスムーズにできそうなことが確認できました。
次に、左側の4番のメタルコア(鋳造して製作する補強材)を外します。
こちらも境界が虫歯になっていたのである程度汚れを取り超音波振動を当てます。
するとすぐに揺れて自然に取れてきました。
遠心部分の歯質がかなり感染しており、慎重に除去していくと歯肉の下まで到達。
レーザーで歯肉をトリミングしながら更に深く感染歯質を除去し、
仮にコンポジットレジンで接着し歯肉縁下の壁をひとまず整えます。
フェルールという咬合力に耐えるだけの健全な資質が失われているため、
この歯の予後は正直期待はできません。
しかし現在は揺れも痛みもないことからなんとか抜歯せず残そうと考えています。
安易に抜歯せず、安易に神経を取らず、安易に健全歯質を削らない
これが近代歯科治療です。
<この症例の担当医師>
外科:梅田和徳
補綴:鎌田昌美、牧野正太郎
KU歯科クリニック